等間隔にペンを走らせる音が響く中で、赤緒は息を詰めていた。  眼前にあるのは真っ白な漫画用紙。そこへと指定された背景を描き加えようとして、あっとその指がインクをこぼしてしまう。 「ご、ゴメンね、マキちゃん……。すぐに拭くから……」  自分の失敗にも、マキは一顧だにしない。それほどに集中しているのだ。改めて、赤緒はマキより与えられた作業部屋を見渡す。  木目作りの小部屋で、扇風機が部屋の隅で回っていた。  泉も仕上げ作業を手伝っており、その手際は自分よりも幾分か慣れたものであった。 「マキちゃん。トーンを貼り終えましたわ」 「あんがと。じゃあ、このページの仕上げ頼むね」 「了解いたしました」  二人のペースについて行けず、赤緒はむむっとまごついてしまう。 「そのー、マキちゃん? 私、やっぱり邪魔じゃないのかな……。だって、さっきから一ページだってまともに仕上げられていないし……」 「今は猫の手だって欲しいんだってば。これを仕上げないと次の賞に間に合わないんだからさ」  マキは二日ほど徹夜しているためか、目の下には重く濃い隈ができている。額にはタオルが巻かれ汗を拭う間も惜しそうだ。 ペンを走らせるのも恐らくは、彼女なりの眠気覚ましなのだろう。一手でも誤れば、すぐにでも眠りに落ちてしまうのが窺えた。 「……でも、えっとぉ……。じゃあ、私、お茶入れるね。やかんを借りても……」 「どうぞー」  マキはページから視線を上げることもない。  赤緒は台所に立ち、嘆息をつく。 「……できないなら、請け負うんじゃなかったかなぁ……。でも、マキちゃんのたっての頼みだったし……」  赤緒はこうなってしまった原因を反芻していた。 「お願い! 赤緒、ちょっと手伝ってくれない?」  帰り際にいきなり懇願され、赤緒は面食らう。 「えっと……何を?」 「あ、言うの忘れてた」 「もう、マキちゃんは相変わらずですわね」  泉が諌めるのをマキは微笑んで後頭部を掻く。 「いやぁ、ちょーっと次の漫画原稿がピンチでさ。赤緒、作画資料とか持ってるじゃん」 「作画資料……? 私、そんなの預かっていたっけ?」 「またまたー。私が何描いているのか知ってるでしょ?」  そういえばマキはロボット物の漫画を描いているのだったか。作画資料と言うのは自分の知っている人機の概要であろう。 「で、でも……機密情報だし……」 「言えないことが多いのは重々承知! それでも、赤緒に協力してもらいたいんだって!」  手を掴まれ涙目で要請されると断れないのが自分だ。赤緒は曖昧に笑いながら頷いていた。 「わ、分かったってば……。じゃあその、言えることだけね?」 「やったー! これで勝ったも同然!」  ガッツポーズを取るマキを尻目に泉が耳打ちする。 「マキちゃん、頑張っていらっしゃるんですよ。今回は編集部も期待しているから、それに応えたい、とか」  赤緒は瞠目する。既にそこまで買われている才能だとは思いも寄らない。  マキは自分と違って将来を見据えているのは気づいていたが、自分より数歩も先を行っているのだ。  改めて、羨ましくなってしまう。  そうやって未来を描けることに。  自分は、明日でさえも不明瞭だ。 「――で、じゃあ赤緒! 帰ったらすぐに私の作業部屋に来て! 早速取り掛かるから! あっ、家にはしばらく帰れないからそのつもりでね!」  マキは豪快に捲し立てたかと思うと、駆け出して行った。その背中に声をかける暇もない。 「……マキちゃんらしいなぁ……。思い立ったらすぐ行動っていうのも」 「今回ばかりはマキちゃんも本気のようですから。私も僭越ながらお手伝いをさせていただきますわ」 「泉ちゃんも? えっとぉ……じゃあ、私、何ができるのかなぁ。だって漫画のこと、よく知らないし……」 「知らないなりにでも手伝って差し上げると、きっと喜んでくださいますわ。マキちゃんは真っ直ぐですから」  それには同意見であった。中学の頃から一緒だが、マキは思い立ったらすぐ行動。即断即決の人間であるのには間違いない。 「……じゃあ、最悪、いるだけでも役に立つのかな……。人機のことはほとんど言えないけれど……」 「ええ、きっと、マキちゃんにとっていい方向に転がるはずですわ」 「はぁ……漫画のお手伝いに……」  帰宅するなり五郎に相談したが、彼はあまりピンと来ていない様子だ。それもそうだろう。自分が手伝うと言っても、何ができるのかも分かっていない。 「それでその……何日か泊まり込みをするかもなので……」 「ああ、構いませんよ。赤緒さんの親友ですものね。留守の間は私とさつきさんで何とかしますのでご安心を」 「えっ、何? 赤緒、どっか出かけるの?」  台所に入ってきたエルニィの問いかけに赤緒は事の次第を話していた。エルニィは聞くなり、ふぅんとニマニマ笑いを浮かべる。 「赤緒にできるの? マンガって結構大変だよ? 背景描き込んだり、ちょっとの気の緩みも許されない、重労働ってイメージだけれど」 「わっ……私だってお役に立てると思います。……多分」  尻すぼみの声にエルニィはやれやれと肩を竦める。 「マキちゃんって、前に柊神社に来ていた人だっけ? へぇ、マンガ家なんだ?」 「漫画家のタマゴらしいですけれど……。でも、マキちゃんの漫画はとっても情熱が籠っているんですっ! 私が保証します!」  親友の夢なのだ。応援するに決まっている。  その響きにエルニィは怪訝そうに尋ねていた。 「でも、赤緒って鈍くさいじゃん? 精密な作業なんてできるの?」 「しっ……失礼な。それなりに失敗はしないつもりですよ」 「ホントぉ? 何だか不安だなー。ねぇ、五郎さん。もしもの時は、ボクも応援に行っていい?」 「それは構いませんが……」  五郎がこちらを窺う眼差しになる。赤緒はぴしゃりと言い放っていた。 「私だけで充分です! だってこれは、親友の一大事ですからっ!」 「……ま、赤緒がそう言うんならいいけれどさ。赤緒ってばトラブル起こしそうだからねー。何かと」  ひらひらと手を振りながらエルニィは居間へと戻っていく。その背中に赤緒は煮え切らないものを感じていた。 「……あの、そんなに鈍くさく見えます?」 「いえ、それは赤緒さんのいいところでもありますから」  否定されないところを見るに、鈍くさいのだろう。肩を落とした赤緒は、よしと鼻息を荒くする。 「私だけでも絶対! 役に立ってみせるんだからっ!」  ――しかし現実はこれである。  インクをこぼす程度ならばまだかわいいほうで、せっかくの仕上げ前の原稿を踏んづけたり、要らない線を書き加えたりする自分にほとほと嫌気が差していた。 「……漫画って、難しいんだなぁ……」  呟きつつ、やかんが沸騰したのを確認し、人数分の茶を入れる。 「お茶が入ったから、一旦休憩にしない?」  その言葉にマキはばっと顔を上げ、赤緒の手から「克己」と書かれた湯呑を引っ手繰り、一気に呷っていた。  ぶはぁ! とまるで中年のようにマキが声にする。 「あの……マキちゃん? 無理しても身体によくないよ……?」 「無理しないと仕上がらないんだから、仕方ないでしょ。あー、ちょっと休憩ー。三十分経ったら起こしてぇー……」  そう言ってふらついたマキはそのまま床で横になってしまう。 「もうっ……風邪引いちゃうよ? マキちゃんってば……」  静かに毛布をかけるとすぐに寝息が聞こえてくる。  赤緒は作業部屋を見渡した。壁を埋め尽くす本棚には資料や漫画本が敷き詰められており、マキの作業する机にはインク塗れのペンが何本も差し込まれていた。 「泉ちゃんも休憩しよ? あんまり気を張っていても毒だよ」 「そうですわね。……でも、この背景だけでも」  トーンを貼る泉に赤緒は作業部屋を見渡していた。てっきり作業部屋と言うのだからマキの自宅の一画かと思いきや、古アパートの一室を借りた本格的な代物に覚えず当惑したほどだ。 「マキちゃん……いつの間にこんな部屋を仕入れたんだろう……」 「今年の頭には借りたみたいですよ。敷金礼金、それに光熱費や諸々は漫画家になってから返すって家族に息巻いたみたいで」 「……そこまで覚悟してるんだ……」  感嘆する赤緒にマキが寝言を漏らす。 「うぅん……あと十ページ……」  夢の中でも漫画にうなされるらしい。赤緒はせめても、とマキに膝枕を貸していた。 「マキちゃん、ちょっと見ない間にそんなに頑張って……」 「赤緒さんだって頑張っていますわ。まさかロボットに乗るなんて、思ってもみなかったですけれど」  泉の評に赤緒は愛想笑いを返す。 「だね……。私も思わなかった。……思えば、マキちゃんや泉ちゃんみたいに、何になりたいだとか、どうしたいって私の中ではなかったのかも……。だから、人機やアンヘルのみんなには、とっても感謝しているの。私なんかでも、守れるものや、誇れるものがあるんだって、思わされてくれたから……」 「赤緒さん……」 「そうだ! マキちゃんが寝ている間なら……! 電話を借りてもいい?」 「構いませんけれど……何を?」 「私にできることって多分、少ないけれどでも、親友のためだもん。役に立ちたいの」  赤緒は迷わず、電話を繋いでいた。 「へぇー! ここがジャパニーズマンガ家の部屋かー! 何かインク臭いー!」  感嘆の声を上げたエルニィに赤緒は、しーっと制する。 「……マキちゃんが寝ていますからっ。その間に、できるだけみんなで進めておきましょう」  三十分で起こせと言われたが、二日も徹夜しているのに無理もさせられない。赤緒の言葉にエルニィとルイ、それにさつきが静かに首肯する。 「……でも、漫画家さんなんですねー。すごいなぁ……」  素直に物珍しそうに観察するさつきに対して、ルイはマキの顔を覗き込んで口にする。 「……アホ面。よだれ出てるし」 「皆さん、できるだけマキちゃんを起こさないように。みんなで手伝えば、きっと完成するはずです!」  おーっ、と手を掲げるアンヘルメンバーに泉が心配そうに声を潜めていた。 「……その、大丈夫なんでしょうか……?」 「みんな、アンヘルの、頼りになる仲間だもん。きっと、大丈夫……」 「うっわー! これ、生原稿って奴? すごっ! ここまで描き込んであるんだ! ジャパニーズマンガってやっぱり違うなぁ!」 「……のはず。多分だけれど」  尻すぼみになった赤緒の言葉にさつきがエプロンを引っ提げて台所へと向かう。 「じゃあ、私はお夜食を作りますね。台所をお借りして」 「ああ、ゴメンね、さつきちゃん。私だけじゃ手が回らなくって……」 「いえ! 赤緒さんのお友達のお役に立てるのなら。えっと、冷蔵庫の中にあるものだけでいいなら、あったかいおうどんにでもしようかな……」 「さつき。私は焼き魚がいい」 「ボクは月見うどんねー!」  めいめいに注文を飛ばす二人には不安のほうが強かったが、赤緒は何とか場を取り成そうとする。 「えっと……この原稿の仕上げを行ってもらえますか? 背景を描き込んでもらって、それで……」 「分かってる分かってるって! ボクはこれでも日本のマンガ、大好きなんだ! ちょちょいのちょいで背景くらいは済ませてみせるよ!」  エルニィは赤緒の手から原稿を引っ手繰り、そのまま作業に移る。ルイは、と言うと部屋の隅で漫画を読み始めていた。 「あのー……、ルイさん?」 「赤緒。この漫画の二巻以降、ある?」 「あ……えっと、そこの棚に」  無言でルイは読書に夢中になってしまう。これは人選ミスであったか、と嘆こうとした途端にエルニィが文句を飛ばしていた。 「ねー、赤緒ー。この展開じゃ、ちょっと不自然じゃない? 主人公の動機が薄いと思うなぁ」 「それはマキちゃんの展開なので……。私じゃ、何とも……」 「ま、いいや! 描き加えちゃおーっと!」  制止する前にエルニィは慣れた手つきでペンを走らせ、即座にコマを割っていく。その流れるような作業に赤緒は目を見開いていた。 「……立花さん。漫画の描き方なんて、どこで……?」 「え? だって図面書くのと一緒でしょ? まー、一発書きなのは変わらないけれどさ。図面と違って別に人機にする必要性ないからね。こっちのほうが楽かも」  思わぬ適性に赤緒が黙り込んでいると、ルイはぱたんと漫画を読了していた。 「……大体分かった」  ルイがマキの机に座り込み、停滞していた作業を推し進める。止めようとしたその時には、マキが描いたのと寸分違わぬ絵柄が抽出されていた。 「え……ルイさんも、漫画経験者なんですか?」 「読めば大体、どういう趣向で描いているのかくらいは分かる。熱血少年漫画なんでしょ? これ」 「そうですけれど……」  しかし、読んだだけで好みまで網羅するのは至難の業のはず。それを何でもないことのようにやってのける二人は、恐らく化け物だろう。  鼻歌混じりにペンを走らせるエルニィと、何でもないように原稿の続きを進めるルイの所業に、赤緒は呆然としていた。 「……何だか、すごい助っ人を連れて来たのですね……」 「うん……。私もびっくり……」  驚嘆の間にも原稿は仕上がっていく。赤緒は、自分もせめて役に立たなければ、と袖口を捲り上げていた。 「よ、よぉーし……。私も、頑張るんだからっ」  ハッと目を覚ましたマキは仕事部屋を見渡す。 「しまった……寝過ぎちゃった。今、原稿はどれくらい進んで……あれ? 私、完成させてから寝たっけ?」  小首を傾げるマキに赤緒と泉は言いやる。 「う、うん……。終わらせてから寝たよね? 泉ちゃん」 「え、ええ……全部終わってから眠られましたわ」 「そうかなぁ……。あれ? でもこの画風……私のだし……。背景もきっちり描き込まれてる……。どうなってるの?」 「そ、それはホラ! マキちゃんの溢れる漫画家の才能が、無意識下で発揮されたんだよ! ……多分」 「そ、そうですわね。マキちゃんは真面目ですから、自分で描いた原稿も忘れちゃっていたんでしょう」 「……二人して何か隠してない? あっ、何かいいにおいがする……」 「あっ、えーっと、お夜食のにおいかな……。あったかいうどんがあるけれど……」 「あ、うん、食べるけれど……」  差し出されたうどんから漂う芳しい香りにマキは覚えずよだれが出ていた。 「何か……料亭の味がする……。これ、赤緒が?」 「あー、まぁ、うん。そうかなぁー……」 「何でこっち見ないの?」 「いやー……何でだろ……」  どうにも承服し切れないが、夜食のうどんの旨味がそのような雑念を掻き消していた。 「よっし! 食ったし寝たし、作業再開! 最後まで付き合ってよね、二人とも!」  その言葉にだけは二人とも強く頷いていた。 「うん……任せて! マキちゃん」 「はい。私もお手伝いを最後までさせていただきますわ」  二人分の言葉があれば充分だ。自分はまだ戦える。 「よっしゃ! 一気にラストスパートに入るよ!」 「……寝ちゃったね」 「全部原稿に注ぎ込みましたから……。でもいいものができたと思いますわ」  原稿を封筒に入れ、赤緒と泉は微笑み合う。 「泉ちゃん、頬っぺたにインクついてるよ」 「赤緒さんだって。疲れが出てますよ?」  互いに笑い合い、それから手を振る。 「マキちゃんは、寝かしておいてあげたほうがいいね。……でも、ちょっと意外だったかな。ここまで本気なんだね、マキちゃんの夢」 「ええ。親友として、誇らしく思うべきなのでしょうね」 「……誇らしく、か……」  自分はまだ夢のなんたるかも知らない。それでもこの手で守れるのはただ一つ――この日本の行方である。  掌に視線を落としていたことで察したのだろうか。泉が声にする。 「……赤緒さんもきっと、夢を掴むことはできますよ。まだ、それが見えなくっても」 「夢、か……。何だかいい響きだよね。そういう、一個の夢のために、自分をかけられるのは、きっと……素敵なことなんだと思う」  だから、マキは自分の誇れる親友だ。  夢のために、しゃにむでも駆け上がれる。そういうところを一か所でも持っているのならば、その生き方は称賛されるべきだろう。 「……赤緒さんには赤緒さんにしかできないことがあると、私も思いますよ。ロボットのこと、私は分かりませんけれど、でも……いい仲間に、恵まれているのは分かりましたわ」  そこだけは、今の自分でも誇れる居場所だ。  赤緒はこそばゆそうに頬を掻いていた。 「……だね。ちょっと変わっているかもしれないけれど、でも……みんながいるから、頑張れる……」  アンヘルメンバーは自分をそれとなく助けてくれる。ちょっと前までなら考えられなかった関係性だ。 「そっとお暇しましょう。マキちゃんの夢が一つでも……叶うといいですわね」 「うんっ! 私たちも……親友として、少しでも助けられるのなら……っ!」  それに勝る喜びはない。赤緒と泉は頷き合い、そっと仕事部屋を後にしていた。 「聞いて聞いて! 赤緒ー、この間の奴! 最終選考まで残ったってさ!」  学校で興奮気味に語りかけてくるマキに、赤緒と泉は歓声を上げていた。 「やったね! マキちゃん!」 「努力が実りましたわね!」 「うん! ……でもさー、これ記憶にないんだけれど……何か途中で路線変更? が入ったみたいでさー。”ここの展開だけ他の人が描いたみたい”とか言われちゃったんだよねー。おかしいなぁ……」  その疑問には曖昧に頷きつつ、赤緒は促していた。 「で、でも、最終選考に残ったってことは……漫画家の夢にまた一歩、近づいたってことだよね?」 「あー、うん。それなんだけれどさー。次の原稿、あるんだー。……また手伝ってくれる?」  赤緒と泉は互いに顔を見合わせ、首肯する。 「もちろん!」 「で、次はどのようなものを描く予定ですの?」 「あー、これ。一応、主人公のラフ」  差し出された主人公のイラストは、まさか紛れもなく――。 「お、小河原さん……?」 「何か、この人をこの間河川敷で見かけてさー。インスピレーションにビビッと来たんだよね! だから次の主人公にしちゃった! えっと、ストーリーはこのキャラが何でも来いの任侠もので、男でも女でも虜にしちゃう、すっごいタフな漢の中の漢なの! それで、この人に夢中になっちゃう男なり女なりが――」  思わぬ展開に赤緒はため息をついていた。 「私の周りって……マキちゃんの創作のネタには尽きないのかなぁ……」  豪快にくしゃみをした両兵に、うわっ、と南が目に見えて引く。 「何? あんたみたいなのが風邪とかまさか言わないわよね……? 血続を超える生命力でしょ?」 「……さぁ、何でか知らんが寒気が……。誰か噂してんのか……?」 「あんたの噂なんて誰もしないって。風邪なら治しなさいよー」  応と返答し、両兵は軒先に赴く。 「……よく分からんが、嫌な予感がする……」

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